親の家をどうするか

編集部確認

だれも住まなくなった実家を描いた版画風のイラスト

親が住んでいた家に、だれも住まなくなることがあります。
けれど、その家をどうするかは、すぐには決められません。
これは、当たり前のことです。
この記事は、順番を考えるための地図です。
順に。ひとつずつ。

すぐに決められないのは、当たり前です

親の家には、暮らしがしみこんでいます。
思い出があり、荷物があり、近所の付き合いがあります。
それを、数日で「こうします」とは決められません。

決められないことを、責める必要はありません。
まず、いま無理に選ばなくてよいことを確かめます。
そのうえで、順番を考えます。
一度に全部は、決めなくて大丈夫です。
順に。ひとつずつ。

急いで結論を出さなくて大丈夫です

家をどうするか。
その答えは、あとから決めても間に合う部分が多くあります。
急かされるとしたら、それは家を「放っておいた」ときです。

言いかえると、最低限の管理を続けているあいだは、急かされません。
ときどき風を入れる。
郵便物をためない。
危ないところがあれば手を打つ。
それだけでも、家は「放置された家」とは扱われません。

なぜ管理が効くのかは、次の章で事実として確かめます。
先に結論だけ言えば、こうです。
売るか貸すかを、今日じゅうに決める必要はありません。
制度や運用は変わることがあります。各窓口でお確かめください。
順に。ひとつずつ。

管理が行きとどかない家には、法律の定めがあります

なぜ「放っておく」と急かされるのか。
そこには、法律の定めがあります。
空家等対策の推進に関する特別措置法、という法律です。

この法律は、管理されていない空き家を二つの段階で扱います。

特定空家等。 そのまま放置すると問題が大きい家のことです。
法律は、こう定めています。
「そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等」。

管理不全空家等。 その手前の段階です。
2023年(令和5年)12月13日に施行された改正で、新しく設けられました。
そのまま放置すれば特定空家等になるおそれのある家について、市町村長が指導や勧告をできる、という定めです。

ここで大事なのは「勧告」という言葉です。
勧告を受けると、税の扱いが変わります。

住宅が建っている土地には、固定資産税を軽くする特例があります。
地方税法は、これを「住宅用地」への特例として定めています。
ところが同じ条文は、勧告を受けた特定空家等・管理不全空家等の敷地を、この「住宅用地」から除くと定めています。
つまり、勧告を受けると、土地を軽くする特例の対象から外れます。

具体的にいくら変わるかは、この記事では計算しません。
土地の評価や面積で結果が変わるからです。
市区町村の窓口で確かめられます。

逆にいえば、勧告は「指導」や段階を経て行われます。
最低限の管理を続けているかぎり、この流れには進みません。
だから、あわてて手放す理由にはなりません。
制度や運用は変わることがあります。各窓口でお確かめください。
順に。ひとつずつ。

選べる道は、大きく三つです

家をどうするか。
選べる道は、大きく分けて三つです。

住む。 だれかが住む、あるいは将来住む道です。
貸す、使う。 人に貸す、地域で使ってもらう道です。
手放す。 売るなどして、次の人に引きつぐ道です。

どれがよいかに、正解はありません。
家族の暮らしと気持ちで、変わります。

そして、どの道を選ぶにも、先に必要なことがあります。
名義を、親から相続人へ移す手続きです。
相続登記といいます。
売るにも、貸すにも、名義がそのままでは進めにくいからです。

相続登記は、2024年(令和6年)4月1日から申請が義務になりました。
期限や、簡単な申し出のしくみは、葬儀のあとの手続きにまとめました。
まず、その一本を先に置いておくと、あとが楽になります。
制度や運用は変わることがあります。各窓口でお確かめください。
順に。ひとつずつ。

売るときに使える特例があります

「手放す」を選んだときの話です。
相続した家を売ると、利益に税がかかることがあります。
その利益から、一定額を差し引ける特例があります。

制度の名前は、少し長いです。
正式には「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」といいます。
国税庁のタックスアンサー、No.3306で説明されています(この案内のページ名は「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」です)。

国税庁は、こう案内しています。
一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができる。
対象は、平成28年4月1日から令和9年(2027年)12月31日までの間に売った場合です。

ただし、要件は細かく決まっています。
売った時期や相続人の数によって、差し引ける額が変わることもあります。
当てはまるかどうかを、この記事で判断することはできません。

心当たりがあるときは、税務署でたずねられます。
「相続した空き家を売ったときの特例が使えるか」と聞けます。
制度や運用は変わることがあります。各窓口でお確かめください。
順に。ひとつずつ。

市の窓口と、空き家バンク

家のことは、家族だけで抱えなくてよいものです。
相談できる公的な場が、いくつかあります。

多くの市区町村に、空き家の相談窓口があります。
管理のこと、活用のこと、まず相談から始められます。

「空き家バンク」というしくみもあります。
市区町村が、貸したい家・売りたい家の情報をのせる仕組みです。
国は、それらを横断して探せる「全国版空き家・空き地バンク」の仕組みも設けています。
国土交通省が、そう案内しています。

おやしるべは、特定の物件や事業者を紹介しません。
ここに挙げたのは、公的な窓口とその仕組みだけです。
どこに相談すればよいか、それ自体を、市の窓口でたずねられます。
制度や運用は変わることがあります。各窓口でお確かめください。
順に。ひとつずつ。

家族で話す順序

最後に、順序をまとめます。
迷ったら、この順で考えると、あわてずにすみます。

まず、住むかどうか。
だれかが住む見込みがあるかを、家族で話します。

つぎに、名義。
どの道を選ぶにしても、相続登記を進めておきます。

それから、管理。
すぐに決まらなくても、最低限の管理を続けます。
それだけで、急かされることはなくなります。

そして、手放すかどうか。
売るか、貸すか、使ってもらうか。
それを考えるのは、いちばん最後で間に合います。

住むか、登記か、管理か、手放すか。
一度に全部は、決められません。
今日はひとつで十分です。
順に。ひとつずつ。

出典と参照日

  1. 空家等対策の推進に関する特別措置法(平成二十六年法律第百二十七号)・e-Gov法令検索(参照日 2026-07-23)
  2. 空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)について・国土交通省(参照日 2026-07-23)
  3. 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)・e-Gov法令検索(参照日 2026-07-23)
  4. No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例・国税庁タックスアンサー(参照日 2026-07-23)
  5. 相続登記の申請義務化に関するQ&A・法務省相続登記が義務化されました(令和6年4月1日制度開始)・法務局(参照日 2026-07-23)
  6. 空き家・空き地バンク総合情報ページ・国土交通省(参照日 2026-07-23)

制度は変わることがあります。各窓口でお確かめください。