葬儀のあとの手続き
編集部確認

葬儀が終わったあとの数日は、不思議な時間です。
やることは山ほどあったはずなのに、急に静かになります。
そして、書類のことが頭をよぎります。
期限があるらしい、とだけ聞いている。
何がいつまでなのかは、わからない。
そのもやもやには、理由があります。
手続きの名前だけを並べた案内が多いからです。
数を見ると、途方に暮れます。
けれど、法律で期限が決まっているものは、そう多くありません。
先にそれだけを押さえてしまえば、残りは順番で間に合います。
この記事は、その並べ替えのための地図です。
順に。ひとつずつ。
期限が決まっているものは、数えられます
葬儀のあとの手続きは、数え方によっては何十にもなります。
そのうち、期限が決まっているものは限られます。
まず、2週間のうちに区切りのあるものです。
3つあります。
年金の届出。 年金を受けていた方が亡くなったときの手続きです。
日本年金機構は、期限をこう案内しています。
「10日(国民年金は14日)以内に」。
出す先は、年金事務所または年金相談センターです。
ここに、ひとつ安心できることがあります。
マイナンバーが収録されている方は、この届出が原則不要です。
日本年金機構が、そう案内しています。
つまり、当てはまらない場合があります。
障害基礎年金や遺族基礎年金だけを受けていた方は、出す先が変わります。
市・区役所または町村役場です。
健康保険の届出。 国民健康保険や後期高齢者医療の資格をなくす手続きです。
窓口は、市区町村です。
堺市は「14日以内に」届け出るよう案内しています。
死亡が確認できるものを持って行く、とも書かれています。
世帯主の届出。 住民基本台帳法は、こう定めています。
その世帯主に変更があった方は、変更があった日から14日以内に届け出る。
届け出る先は、市町村長です。
これにも、当てはまらない場合があります。
中央区は、必要な場合をこう案内しています。
15歳以上の方が2人以上残っている世帯です。
1人世帯だった場合は、手続きが要りません。
2人世帯で残った方が1人の場合も、同じです。
自動的に世帯主が決まるから、と説明されています。
3つ並べました。
けれど、3つとも必要な方ばかりではありません。
制度や運用は変わることがあります。各窓口でお確かめください。
順に。ひとつずつ。
月で数える期限は、3つです
つぎは、月の単位で区切りのあるものです。
こちらも3つです。
どれも、当てはまる方と当てはまらない方がいます。
相続放棄は、3か月。 亡くなった方の権利や義務を、一切受け継がない選択です。
裁判所は、そのように説明しています。
借金のほうが多いときなどに、検討されます。
民法は、期間をこう定めています。
自己のために相続の開始があったことを知った時から、3か月以内。
その間に、受け継ぐか放棄するかを決めます。
申述する先は、家庭裁判所です。
被相続人、つまり亡くなった方の最後の住所地の家庭裁判所です。
3か月と聞くと、短く感じます。
ただし、この期間には続きがあります。
民法は「家庭裁判所において伸長することができる」とも定めています。
間に合いそうにないときは、家庭裁判所にたずねられます。
準確定申告は、4か月。 亡くなった方の、その年の所得税の申告です。
相続人が行います。
国税庁は、期限を「相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内」と案内しています。
所得税法にも、同じ趣旨が定められています。
ここも、全員に必要な手続きではありません。
もともと確定申告をすべきだった方が亡くなった場合の手続きです。
当てはまるかどうかは、税務署で確かめられます。
相続税の申告は、10か月。 国税庁は、こう書いています。
「被相続人が死亡したことを知った日(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10か月以内」。
出す先は、亡くなった方の住所地を所轄する税務署です。
相続税法にも、同じ趣旨が定められています。
そして、いちばん大事なところです。
相続税の申告は、財産が一定の額を超える場合の手続きです。
その線を、基礎控除額といいます。
国税庁は、計算式をこう示しています。
「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」。
超えるかどうかの判断は、この記事ではできません。
財産の数え方には、細かい決まりがあるからです。
税務署で確かめられます。
3つとも、当てはまらないことがあります。
制度や運用は変わることがあります。各窓口でお確かめください。
順に。ひとつずつ。
家や土地があるときの、3年
ここからは、この記事でいちばんお伝えしたいことです。
不動産の名義を移す手続き、相続登記の話です。
2024年(令和6年)4月1日から、相続登記の申請が義務になりました。
法務局は、こう案内しています。
「相続(遺言も含みます。)によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません」。
根拠は、不動産登記法第76条の2です。
期限を過ぎた場合の定めもあります。
法務局は、こう書いています。
「正当な理由なく義務に違反した場合は10万円以下の過料(行政上のペナルティ)の適用対象となります」。
不動産登記法第164条に定めがあります。
ここまでは、少し身構える話かもしれません。
けれど、大事なのはこの先です。
知っていれば間に合う仕組みが、あわせて用意されています。
まず、この義務は2024年より前の相続にも及びます。
法務省は、こう案内しています。
「令和6年4月1日より前に相続したことを知った不動産で、相続登記がされていないものについては、令和9年3月31日までに相続登記をする必要があります」。
令和9年3月31日は、2027年3月31日です。
何年も前に相続した実家があるかもしれません。
名義がそのままになっている土地があるかもしれません。
心当たりがあるときは、ここから確かめられます。
つぎに、簡単な方法のことです。
遺産の分け方が、まだ決まらないことがあります。
相続人が多くて、戸籍を集めるだけで時間のかかることもあります。
そういうときのために、相続人申告登記という仕組みがあります。
法務省は、こう説明しています。
「相続登記の義務を履行するための簡易な方法として新設された制度」。
2024年4月1日から始まりました。
登記簿上の所有者の相続人であることなどを、3年以内に登記官へ申し出ます。
それで、義務を果たしたことになります。
特定の相続人が単独で申し出ることもできる、と書かれています。
ただし、これは名義を移す登記ではありません。
法務省は、権利関係を公示するものではないと説明しています。
売ったり、担保に入れたりする場合には、相続登記が必要になります。
いったん義務を果たしておくための仕組み、という位置づけです。
進め方は、法務局でたずねられます。
法務局には、登記手続案内という窓口があります。
専門的な知識のない方へ、申請書の作成などに必要な情報を提供する案内です。
1回20分以内で、完全予約制です。
電話、法務局窓口での対面、ウェブ会議から選べます。
今日じゅうに決めることは、ひとつもありません。
心当たりがあるときに、予約を1件入れる。
それで、十分です。
制度や運用は変わることがあります。各窓口でお確かめください。
順に。ひとつずつ。
急がなくてよいもの
ここまでが、期限のある手続きです。
数えてみると、多くはありませんでした。
残りの多くには、全国共通の期限が見あたりません。
銀行の口座。 全国銀行協会は、こう案内しています。
「相続の連絡と同時に、お亡くなりになられたお客さま(被相続人)の口座での取引(預金の入出金等)は、原則として制限されます」。
連絡をすると、いったん動かせなくなるということです。
手続きの流れも示されています。
申し出て、書類をそろえて、提出して、払い戻しを受ける。
この4つの段階です。
同協会の案内に、期限の記載は見あたりませんでした。
「手続に日数がかかる場合もあります」とは書かれています。
公共料金や、各種の解約。 電気やガス、通信などの名義変更や解約です。
この記事で確かめた範囲では、全国共通の法律上の期限は見あたりませんでした。
落ち着いてからで間に合う部分が、多くあります。
契約ごとの決まりは、それぞれの会社でたずねられます。
葬祭費の申請。 国民健康保険や後期高齢者医療に加入していた方の場合、葬祭費という給付があります。
申請できるのは、葬祭を行った方です。
国民健康保険法は、給付を受ける権利の時効を2年と定めています。
高齢者の医療の確保に関する法律にも、同じ定めがあります。
つまり、2年の幅があります。
額は、市区町村によって違います。
お住まいの市の額は、葬祭費の自治体データで確かめられます。
申請の手順や、費用が心配なときの考え方は、葬儀のお金が払えないときにまとめました。
急がなくてよいものが、いちばん多いところです。
制度や運用は変わることがあります。各窓口でお確かめください。
順に。ひとつずつ。
窓口でこう聞けます
制度の名前を覚えていなくても、たずねることはできます。
聞き方の例を、窓口ごとに置いておきます。
市区町村の窓口へ。
- 「先日、家族が亡くなりました。この市でする手続きを、まとめて教えていただけますか」
- 「健康保険の資格と、世帯主の届出について確かめたいです」
年金事務所または年金相談センターへ。
- 「年金を受けていた家族が亡くなりました。届出が必要かどうか、確かめていただけますか」
マイナンバーが収録されていれば原則不要です。
ですから、「必要かどうか」からたずねられます。
税務署へ。
- 「相続税の申告が必要かどうか、考え方を教えてください」
- 「亡くなった家族に、準確定申告が必要か確かめたいです」
法務局へ。
- 「相続した不動産の登記について、登記手続案内を予約したいです」
- 「遺産の分け方がまだ決まっていません。相続人申告登記について教えてください」
家庭裁判所へ。
- 「相続放棄の申述について、必要な書類を教えてください」
どこに聞けばよいか、それ自体がわからないときもあります。
そのときは、法テラスという窓口があります。
日本司法支援センターという名前の機関です。
「国によって設立された法的トラブル解決のための『総合案内所』」だと説明されています。
おやしるべは、特定の事業者や専門家を紹介しません。
ここに挙げたのは、公的な窓口だけです。
順に。ひとつずつ。
今日は、ひとつで十分です
最後に、もう一度並べます。
日で数える期限は、年金・健康保険・世帯主の3つでした。
月で数える期限は、相続放棄・準確定申告・相続税の3つでした。
年で数える期限は、不動産の相続登記でした。
合わせて7つです。
それ以外の多くには、全国共通の期限が見あたりません。
順番に進めて間に合う部分のほうが、多いということです。
そして、7つのうち当てはまらないものもあります。
マイナンバーが収録されていれば、年金の届出は原則不要です。
世帯の人数によっては、世帯主の届出が要りません。
確定申告をしていなければ、準確定申告はありません。
基礎控除を超えなければ、相続税の申告もありません。
不動産がなければ、相続登記もありません。
残るのは、ほんの少しです。
気持ちのほうは、書類のようには進みません。
葬儀が終わったあとに、力が抜けることもあります。
眠れない夜が続くこともあります。
そんなときに、話を聞く窓口があります。
#いのちSOS 0120-061-338(24時間365日)
よりそいホットライン 0120-279-338(24時間対応)
一度に全部は、決められません。
手続きは、明日からでも間に合います。
今日はひとつで十分です。
順に。ひとつずつ。
この記事で書かなかったこと
- 死亡届の7日以内(戸籍法第86条): 姉妹記事危篤と言われたらで扱っています。本記事の読者はすでに葬儀を終えており、この手続きは済んでいる段階のため、繰り返していません。
- 相続税の税率・具体的な税額の計算: 個別の税額判断に踏み込まないため、国税庁が示す基礎控除額の計算式の転記にとどめました。財産の評価方法や特例(配偶者の税額軽減、小規模宅地等の特例など)も扱っていません。判断は税務署に委ねています。
- 生命保険金の請求期限: 3年という期間があると一般に説明されますが、保険法の条文と各社の約款を一次情報で確認していないため書いていません。
- 預貯金の仮払い制度: 遺産分割前に一定額を引き出せる制度があると一般に説明されますが、民法の条文と金融機関の実際の取扱いを一次情報で確認していないため書いていません。
- 遺言書の検認・遺産分割協議の進め方: 全国共通の法定期限を確認できず、本記事の主題(期限の地図)から外れるため扱っていません。
- 法テラスの無料法律相談の利用条件: 収入等の要件を一次情報で確認できなかったため、機関の位置づけ(国が設立した総合案内所)のみにとどめ、無料であるとは書いていません。
- 相続登記の必要書類・登録免許税・費用: 一次情報での確認範囲を超えるため書いていません。法務局の登記手続案内へ委ねています。
- 専門家への依頼・紹介: おやしるべは特定の事業者・専門家への送客をしません。参照した法務局のページには登記申請の代理を依頼できる旨の記載もありますが、本記事では扱わず、公的窓口までを案内しています。
- 自治体の「おくやみ窓口」「ワンストップ窓口」: 設置している自治体とそうでない自治体があり、全国共通ではないため、制度名としては書いていません。第5章では「まとめて教えていただけますか」というたずね方にとどめています。
- 銀行ごとの必要書類: 金融機関により異なり、全国銀行協会の案内も「相続の状況により異なる」としているため、個別の一覧は書いていません。
- 公共料金・各種解約に期限がないという断定: 「この記事で確かめた範囲では見あたりませんでした」という書き方にとどめ、期限が存在しないとは断定していません。
出典と参照日
- 年金受給者が亡くなりました。何か手続きは必要ですか。(日本年金機構)(参照日 2026-07-23)
- こんなときは14日以内に届出を(堺市公式)(参照日 2026-07-23)
- 住民基本台帳法(昭和四十二年法律第八十一号)(e-Gov法令検索)(参照日 2026-07-23)
- 世帯主が死亡したのですが、世帯主変更は必要ですか。(中央区公式)(参照日 2026-07-23)
- 民法(明治二十九年法律第八十九号)(e-Gov法令検索)(参照日 2026-07-23)
- 相続の放棄の申述(裁判所)(参照日 2026-07-23)
- No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)(国税庁・令和7年4月1日現在法令等)(参照日 2026-07-23)
- 所得税法(昭和四十年法律第三十三号)(e-Gov法令検索)(参照日 2026-07-23)
- No.4205 相続税の申告と納税(国税庁・令和7年4月1日現在法令等)(参照日 2026-07-23)
- No.4152 相続税の計算(国税庁・令和7年4月1日現在法令等)(参照日 2026-07-23)
- 相続税法(昭和二十五年法律第七十三号)(e-Gov法令検索)(参照日 2026-07-23)
- 相続登記が義務化されました(令和6年4月1日制度開始)~なくそう 所有者不明土地 !~(法務局)(参照日 2026-07-23)
- 不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)(e-Gov法令検索)(参照日 2026-07-23)
- 相続登記の申請義務化に関するQ&A(法務省)(参照日 2026-07-23)
- 登記手続案内(法務局)(参照日 2026-07-23)
- 預金相続の手続の流れ(一般社団法人 全国銀行協会)(参照日 2026-07-23)
- 国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)(e-Gov法令検索)(参照日 2026-07-23)
- 高齢者の医療の確保に関する法律(昭和五十七年法律第八十号)(e-Gov法令検索)(参照日 2026-07-23)
- 法テラスについて(日本司法支援センター 法テラス)(参照日 2026-07-23)
- 電話相談窓口(まもろうよ こころ・厚生労働省)(参照日 2026-07-23)
- おやしるべ 葬祭費データ(掲載150市一覧)(参照日 2026-07-23)
制度は変わることがあります。各窓口でお確かめください。