危篤と言われたら
編集部確認

「危篤です」
病院からそう言われた夜は、時間の感覚がなくなります。
頭のなかは真っ白なのに、次々と何かを聞かれます。
何を決めればいいのか、わからなくなります。
それが、ふつうです。
この記事は、今夜のための地図です。
決めなくていいことを、先に外していきます。
そのうえで、残ったほんの少しだけを、そっと並べました。
容体や治療のことは、主治医や病院の相談窓口へ。
ここでは、暮らしと手続きの話をします。
迷ったら、この2語に還ります。
順に。ひとつずつ。
今夜、決めるのはひとつだけ
危篤の知らせを受けると、あれもこれもが頭をよぎります。
でも、今夜のうちに決めることは、ひとつだけです。
ご本人を、このあとどこへお連れするか。
その連絡先を、ひとつ持っておくことです。
病院は、治療のための場所です。
亡くなったあとに安置できるスペースには、限りがある場合が多いようです。
そのため、行き先の連絡先だけ先に持っておくと、気持ちが少し落ち着きます。
行き先は、ご自宅でも、外の安置施設でもかまいません。
まだ決められないときは、病院の相談窓口に聞けます。
「まだ決められていません」と、そのまま伝えて大丈夫です。
知らせる相手も、今夜は最小限で足ります。
すぐに来られる方と、一緒に決める方。それだけです。
親戚や職場への連絡は、明日で間に合います。
残りは、あとから一緒に考えていけます。
順に。ひとつずつ。
葬儀社は、その場で契約しなくて大丈夫
病院で、葬儀社を紹介されることがあります。
搬送を頼んだ会社から、そのまま葬儀の話が続くこともあります。
気持ちが追いつかないまま、話だけが進んでいきます。
そこで、いったん止まって大丈夫です。
搬送を頼むことと、葬儀を契約することは、分けて考えられます。
「まず搬送だけ、お願いします」という伝え方があります。
「葬儀のことは、家族と相談してから決めます」とも言えます。
その場で決めなくて大丈夫です。
国民生活センターは、葬儀の料金トラブルに注意を呼びかけています。
全国の消費生活センター等に寄せられる葬儀サービスの相談は、年間900件前後です。
そのうち「高価格・料金」に関する相談の割合は、2025年度で52.6%でした。
親しい人との死別で冷静な対応ができないことも、背景にあると説明されています。
つまり、落ち着けないのは、ご家族のせいではありません。
同センターは、消費者へのアドバイスとして次の点をあげています。
- 葬儀の希望やイメージを考えて、情報を集めること
- 葬儀社との打ち合わせは、親族や第三者など複数で行うこと
- 見積書を受け取り、内容(明細)をよく確かめること
- 不安なときやトラブルが生じたときは、最寄りの消費生活センター等に相談すること
相談先は、消費者ホットライン「188」です。
最寄りの窓口を案内してくれる、全国共通の3桁の番号です。
制度や運用は変わることがあります。各窓口でお確かめください。
急がなくて大丈夫です。順に。ひとつずつ。
このあと起きること
先が見えないと、不安はふくらみます。
順番がわかるだけで、少し呼吸ができます。
ここでは、このあとに続く手続きを、順に並べます。
はじめに、医師から死亡診断書が交付されます。
死亡診断書は、人の死亡を医学的・法律的に証明する文書です。
生前に診療を受けていた傷病に関連して亡くなった場合に交付されます。
それ以外の場合は、死体検案書という文書になります。
医師法により、医師には作成・交付の義務が定められています。
つぎに、死亡届です。
死亡の届出は、死亡の事実を知った日から7日以内と定められています。
届出先は、亡くなった場所、本籍地、届出人の所在地のいずれかの市区町村です。
届出人は、同居の親族、その他の同居者、家主などの順とされています。
ただし、この順序にかかわらず届け出ることができます。
同居の親族以外の親族や、後見人なども届け出られます。
死亡診断書は死亡届と一体の用紙になっている、と案内する自治体もあります。
死亡届が受理されると、火葬許可証が発行されます。
火葬場は、この許可証を受け取ったあとでなければ、火葬を行えません。
そして、埋葬と火葬は、死亡後24時間を経過したあとでなければ行えません。
ほかの法令に別の定めがある場合を除く、という但し書きが付いています。
火葬までのあいだ、ご本人はどこかで安置されます。
ここまでの手続きを、どこまで葬儀社に頼めるか。
それは、契約の前に確かめられます。
制度や運用は変わることがあります。各窓口でお確かめください。
ここも、順に。ひとつずつ。
お金の話は、あとでいい
お金のことは、いちばん口に出しにくい話です。
それでも、頭のすみに残り続けます。
先に、ひとつだけお伝えします。
費用の相談は、あとからでも間に合う仕組みがあります。
国民健康保険や後期高齢者医療に加入していた場合、葬祭費という給付があります。
国民健康保険では、市町村や組合の条例・規約で定めることとされています。
後期高齢者医療では、広域連合の条例で定めることとされています。
そのため、金額は、お住まいの地域によって変わります。
申請は、葬儀のあとになります。
申請するのは葬祭を行った方です、と案内する自治体があります。
給付を受ける権利は、2年で時効になると法律に定められています。
だから、今夜のうちに調べなくても大丈夫です。
お住まいの市区町村の額は、葬祭費の自治体データで確かめられます。
申請の手順や、費用が心配なときの考え方は、葬儀のお金のことにまとめました。
金額や条件は変わることがあります。各窓口でお確かめください。
お金の話も、順に。ひとつずつ。
ひとりで抱えないで
ここまで、いくつもの手続きが出てきました。
でも、今夜やることは、ほとんどありません。
そばにいること。それだけで、十分です。
それでも、気持ちが持たない夜があります。
眠れない。涙が止まらない。何も考えられない。
そんなときは、声をそっと預けられる場所があります。
暮らしや介護の相談は、地域包括支援センターでも受けつけています。
市町村が設けた、地域の高齢者の総合相談の窓口です。
権利を守る相談や、介護予防の援助なども行っています。
夜は、いつか明けます。
決めることは、明日からでも間に合います。
今日は、ここまでで大丈夫です。
順に。ひとつずつ。
出典と参照日
- 死亡診断書(死体検案書)について(厚生労働省)(参照日 2026-07-22)
- 医師法(昭和二十三年法律第二百一号)(e-Gov法令検索)(参照日 2026-07-22)
- 戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)(e-Gov法令検索)(参照日 2026-07-22)
- 死亡届(法務省)(参照日 2026-07-22)
- 死亡届(大阪市公式・2026-04-01更新)(参照日 2026-07-22)
- 死亡届(横浜市公式・2026-03-12更新)(参照日 2026-07-22)
- 墓地、埋葬等に関する法律(昭和二十三年法律第四十八号)(e-Gov法令検索)(参照日 2026-07-22)
- 依然として多い葬儀サービスの料金トラブル−「家族葬だから安い」と思っていませんか?−(2026年6月3日公表・国民生活センター)(参照日 2026-07-22)
- 国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)(e-Gov法令検索)(参照日 2026-07-22)
- 高齢者の医療の確保に関する法律(昭和五十七年法律第八十号)(e-Gov法令検索)(参照日 2026-07-22)
- 葬祭費の支給(新宿区公式・2026-02-10更新)(参照日 2026-07-22)
- 地域包括ケアシステム(厚生労働省)(参照日 2026-07-22)
- まもろうよ こころ 電話相談窓口(厚生労働省)(参照日 2026-07-22)
制度は変わることがあります。各窓口で最新をお確かめください。