看取りの前に整えること

編集部確認

在宅医療・看取りの版画風イラスト

「看取り」という言葉に、気持ちが追いつかない。
その感覚は、多くの家族が同じです。
この記事は、答えを出すためのものではありません。
制度として何があるかを、順に並べただけの地図です。
医療の中身については、判断も助言もしません。
それは、主治医と話すことです。
順に。ひとつずつ。

気持ちが追いつかないのは、多くの家族が同じです

言葉だけが先に来ることがあります。
病院で聞いた説明が、うまく飲み込めない。
考えたくない、と感じる日もあります。

それは、めずらしいことではありません。
同じ場所で、多くの家族が立ち止まってきました。

この記事でできるのは、二つだけです。
国が示している枠組みの名前を伝えること。
家で過ごすという選択肢と、その相談先を並べること。
どちらを選ぶべきかは、書きません。
順に。ひとつずつ。

「人生会議」という枠組みがあります

話し合いの枠組みには、国が示したものがあります。

厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」です。
平成30年3月に改訂されたものが、現在のかたちです。

このガイドラインは、いちばん大事な原則をこう書いています。
医師等から適切な情報の提供と説明がなされ、それに基づいて本人が医療・ケアチームと十分な話し合いを行い、「本人による意思決定を基本としたうえで、人生の最終段階における医療・ケアを進めることが最も重要な原則である」。

本人が主体です。
家族は、本人を支える側として、その話し合いに加わります。
ガイドラインは「家族等の信頼できる者も含めて、本人との話し合いが繰り返し行われることが重要である」としています。

「家族等」の範囲は、思うより広く書かれています。
解説編は、法的な意味での親族関係のみを意味せず「より広い範囲の人(親しい友人等)を含みます」としています。
複数いてもよい、とも書かれています。

この取り組みには、公式の愛称があります。
厚生労働省は「より馴染みやすい言葉となるよう『人生会議』という愛称で呼ぶことに決定しました」と公表しています。
中身は、解説編の言葉でいうと、こうです。
「人生の最終段階の医療・ケアについて、本人が家族等や医療・ケアチームと事前に繰り返し話し合うプロセス」。

大事なことを、ひとつ添えます。
このガイドライン自体は、医療・介護に従事する人が、本人と家族等を支えるために活用するものと位置づけられています。
家族に何かを義務づけるものではありません。
解説編も、話し合った内容を文書にまとめるときは「医療・介護従事者からの押しつけにならないように配慮し」と書いています。

だから、身がまえなくて大丈夫です。
話せるときに、話せる範囲で。
それで足ります。
順に。ひとつずつ。

一度決めたことは、変えてよいことです

もうひとつ、知っておくと楽になることがあります。
一度決めたことは、変えてよい。
これは、ガイドラインにそう書かれている事実です。

本文には、こうあります。
「本人の意思は変化しうるものであることを踏まえ、本人が自らの意思をその都度示し、伝えられるような支援が医療・ケアチームにより行われ、本人との話し合いが繰り返し行われることが重要である」。

平成30年の改訂は、この点をわざわざ強調するために行われました。
解説編は、改訂の観点の一つ目をこう書いています。
「本人の意思は変化しうるものであり、医療・ケアの方針についての話し合いは繰り返すことが重要であることを強調すること」。

つまり、一回で正解を出す場ではありません。
時間がたてば、気持ちは動きます。
動いてよい、という前提で作られた枠組みです。

だから、途中で気が変わっても、やり直しではありません。
話し合いは、繰り返すものとして書かれています。
順に。ひとつずつ。

家で過ごすという選択肢があります

療養の場所には、いくつかの選択肢があります。
病院で過ごす。施設で過ごす。家で過ごす。
どれがよいかを、この記事では比べません。
ここで伝えるのは、家という選択肢も制度として用意されている、という事実だけです。

厚生労働省のリーフレットは、在宅医療を「自宅等で受ける医療」と説明しています。
通院が難しくなったときや、退院後も、自宅等で医療を受けられる、と書かれています。
この「自宅等」には、注記がついています。
年齢や状態によって、自宅のほか高齢者住宅等の住まいで受けることもできる、という趣旨の注記です。
受けられる場面としては「通院が困難」「慢性疾患などでできる限り家で過ごしたい」などが例に挙がっています。
そして、こう書かれています。
「かかりつけ医等が自宅などでの療養が必要だと判断した時に、以下のサービスを受けられます」。
判断するのは、かかりつけの医師です。

医師の訪問には、二つの呼び名があります。

訪問診療。 「計画的・定期的に、患者さんのご自宅などに医師が訪問し、診療を行います」。

往診。 「急変の際などに、不定期に、患者さんのご自宅などに医師が訪問し、診療を行います」。

看護師などが訪問するしくみもあります。
これが訪問看護です。
リーフレットは「看護師等がご自宅に訪問し、安心感のある生活を営めるよう処置や療養中の世話等を行います」と説明しています。
このほか、歯科・薬剤師・リハビリテーション・栄養の訪問も並んでいます。

では、どこに聞けばよいか。
公式リーフレット自身が、相談先を書いています。
「地域によって受けられるサービスが異なる場合もありますので、医師・ケアマネジャー等とも相談しましょう」。
そして「困ったときのために、前もってかかりつけの医師やケアマネジャーと相談し、色々な選択肢を見つけておきませんか?」とも書かれています。

相談先は、大きく三つです。

窓口では、こう聞けます。

制度や運用は変わることがあります。各窓口でお確かめください。
おやしるべは、特定の医療機関や施設を紹介しません。
順に。ひとつずつ。

費用は、公的な保険のしくみの中にあります

お金の心配は、口に出しにくいものです。
先に、制度の枠組みだけをお伝えします。

家で受ける医療は、公的な医療保険の給付の中に位置づけられています。
健康保険法は、療養の給付として行うものを列挙しています。
その一つが「居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護」です。
後期高齢者医療制度についても、高齢者の医療の確保に関する法律に同じ列挙があります。

訪問看護には、専用の給付の名前もあります。
「訪問看護療養費」です。
健康保険法にも、高齢者の医療の確保に関する法律にも、この給付が定められています。

訪問看護は、介護保険の側にも位置づけがあります。
介護保険法は「居宅サービス」の種類を並べており、その中に訪問看護が入っています。
定義は「その者の居宅において看護師その他厚生労働省令で定める者により行われる療養上の世話又は必要な診療の補助」です。
どちらの保険から給付されるかは、状態や制度上の条件で決まります。

ここから先、金額の話は書きません。
自己負担がいくらになるかは、加入している保険、所得、受けるサービスの組み合わせで変わります。
おやしるべが一般論として計算してお見せすることは、できません。

聞ける場所はあります。

こう聞けます。

制度や運用は変わることがあります。各窓口でお確かめください。
順に。ひとつずつ。

今日は、ここまでで十分です

一度に全部は、決められません。
枠組みの名前を知った。
話し合いはやり直せると知った。
家という選択肢と、聞ける窓口を知った。
今日は、それで十分です。

同じ時間軸の続きは、こちらにあります。

先のことは、そのときに読めば間に合います。
今日は、ひとつで十分です。
順に。ひとつずつ。

出典と参照日

  1. 人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン(厚生労働省・改訂 平成30年3月)(参照日 2026-07-24)
  2. 人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン 解説編(人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会・改訂 平成30年3月)(参照日 2026-07-24)
  3. 「人生会議」してみませんか(厚生労働省)(参照日 2026-07-24)
  4. 「在宅医療をご存知ですか?」リーフレット(厚生労働省・全国在宅医療会議協力)(参照日 2026-07-24)
  5. 在宅医療の推進について(厚生労働省)(参照日 2026-07-24)
  6. 地域包括支援センター(厚生労働省・地域包括ケアシステム)(参照日 2026-07-24)
  7. 介護保険法(平成九年法律第百二十三号)・e-Gov法令検索(参照日 2026-07-24)
  8. 健康保険法(大正十一年法律第七十号)・e-Gov法令検索(参照日 2026-07-24)
  9. 高齢者の医療の確保に関する法律(昭和五十七年法律第八十号)・e-Gov法令検索(参照日 2026-07-24)

制度は変わることがあります。各窓口でお確かめください。